養蜂の四季

5~6月頃、女王バチが春から卵を産み続け、働きバチがせっせと蜜や花粉を運び込むにつれ巣箱の中がいっぱいになり、産卵や蜜の貯蔵スペースが無くなりかけると分蜂が起こります。女王バチがまもなく生まれる新しい女王バチに巣を譲り、群の半分近い働きバチがおなかいっぱい蜜を吸いこんで、女王蜂と一緒にいっせいに巣箱から飛び出していくのです。必ず週一回は内検をおこない、新しい女王蜂が作られる王台を除去します。基本的に、女王蜂が新しく、巣板が多い場合は分蜂しにくいので、そのような環境にすると管理は楽になります。

ミツバチにとって“寒さ”や“暑さ”は害敵以上に要注意。なぜなら、病気や寄生虫が発生しやすくなるからです。巣箱はもちろん養蜂場全体の風通しを良くして、余分な湿気が溜まらないようにすること、巣箱に直射日光が当らないように遮光シートをかぶせたりして、巣箱内の温度の上昇を抑えることを心掛けています。

お盆の時期が過ぎると、ミツバチたちの天敵であるスズメバチが現れはじめます。養蜂場でよく見られるのは、オオスズメバチ、キイロスズメバチなどです。キイロスズメバチなどはミツバチを一匹づつ捕まえて蜂ダンゴにして持ち帰るだけですが、オオスズメバチになると片っ端からミツバチを噛み砕いて全滅状態にし、幼虫をすべて持ち帰ってしまいます。秋は、このおそろしい天敵からミツバチたちを守るための対策が必要です。いわき養蜂では、スズメバチ防止ネットで箱のある場所を囲って対策をしています。

養蜂家の冬の仕事は、ミツバチたちを春まで静かに休ませてあげることです。寒さや餌不足といったことに気を遣いながら手入れをします。巣枠の数を減らし、巣箱の中のミツバチの密度をあげてやることで、熱効率の高まる環境をつくります。そして、巣門を狭くして巣箱の中に寒気が入るのを防ぎます。さらに、ビニールハウスを建ててミツバチが寒さに耐えられるようにしています。ミツバチが活動できるのは摂氏8度以上です。寒い日に内検を行うと巣箱の中の温度が下がってミツバチが傷つきますので注意しましょう。

養蜂家の仕事

養蜂とは、ただ単にミツバチを飼育してはちみつを採集するだけの仕事ではありません。
ミツバチは自然の中で花蜜を採集する際に、植物や農作物の花粉媒介を行っていて、受粉の手助けも行っています。ミツバチはこの花粉媒介によって自然環境はもちろん、農業における野菜や果物といった農作物の生産を守ることに大きく貢献しているのです。私たちの食生活に様々な恩恵をもたらしてくれているミツバチができるだけ安心して暮らせるように環境を整えてサポートを行い、自然との共生を目指すのが養蜂家としての役目。以前は世界的にもミツバチの減少や養蜂家の高齢化などの問題、国産はちみつの価格が低迷していたことで国内の養蜂戸数は減少傾向にありましたが、昨今では年々増加傾向にあり、令和元年にはミツバチの国内飼育戸数は9,782戸にまで上りました。国産はちみつの価格も上昇傾向にあり、都市部での養蜂に注目が集まるなど、ミツバチや養蜂家という職業に今改めて関心が高まってきています。

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